2015/06/27

小説「宇宙エレベーターの夢」と「ジャックと豆の木」の童話

ここ2週間ばかり、児童向けの小説を書いていました。

3月に某雑誌からひさしぶりに依頼を受けたので、そこそこ日数に余裕があったのですが、やっぱりなかなか考えがまとまらず、だんだん締め切りが迫って来たりして、しかも、さらに別の出版社からの依頼が来たりして、重圧に負けそうでありました。



対人では明るくふるまうことができるのですが、ノイローゼみたいに、暗く、重く、夜がこわい日々でありました。

執筆する内容は担当編集者のご要望があり、題材はおよそ50年後の未来の宇宙についてでした。
いくつか例示があり、その中で私は宇宙エレベーターについて書くことにしました。

宇宙エレベーターとは軌道エレベーターとも呼ばれ、静止軌道上の宇宙ステーションと地表を鋼鉄より頑丈なカーボンナノチューブのケーブルでつなぎ、これをレールにして電車のように上昇して宇宙へ旅する技術です。

物語は、ひとりの少年がおもちゃのような機械で大学生たちが宇宙エレベーターの実験を目撃するところから始まります。少年はその実験に興味を持ち、大学生たちの手伝いをすることになり、公開実験にのぞみます。

宇宙エレベーターのパイロットになることを自分の将来の夢として決心した少年は、成人後、その夢を見事にかなえます。

成人した主人公は世界で初めての有人宇宙エレベーターに搭乗し、36000キロメートル上空の静止軌道に向かいます。

ちなみに国際宇宙ステーションやスペースシャトルは400キロメートル上空ですから、90倍の遠い距離です。
そんなところまでケーブルをのばすのですから、たいへんな技術です。
日本の政府は2050年までに実現させると宣言しているそうです。(まじすか?)

さて、物語の展開はなかなか波瀾万丈です。

宇宙エレベーターの発進後、とたんに主人公は原因不明の昏睡状態に陥ります。
(ネタバレで言うと、主人公はラスト直前まで寝ています)
ですが、主人公が活躍しないわけではなく、物語の多くの部分は主人公の回想や幻覚が入り交じった主観の視点で進んでいきます。

さらに、目的地の静止軌道宇宙ステーション内では人工知能の自己学習機能が爆発的に最大化して「技術的特異点」に達し、人間以上の知恵を心を獲得し、ロボットの叛乱の疑いが持ち上がり……。

すべての謎を解くカギは「ジャックと豆の木」の童話だったり……。

巨大技術に対してあともどりをしないベクトルを持ってしまう人類へのシニカルなネコパンチだったり。

……まあ、てんこ盛りですね。

ところで、日本の気象衛星ひまわりは静止軌道にあり、わがまち清瀬市の気象衛星センターが管制しています。また、日本でこの宇宙エレベーターの開発を本気で研究しているのは、やはり、わがまち清瀬にある大林組の研究所です。



こういう不思議なつながりは、わが清瀬市の渋谷金太郎市長が大好きなことなのですが、私も見習いまして、この神の啓示のようなご縁に感謝しつつ、「小説の神様のご降臨(アイデアを発想すること)」を期待しながらあれやこれや思考実験を繰り返していたのであります。




これらの写真は清瀬市にある気象衛星センターに本年3月に見学に行ったときのものです。管制ルームの写真は撮影許可をいただいています。

2週間ばかり、がんばりまして、昨日の朝、原稿を送付することができました。
なんとか締め切りに間に合わすことができ、ご迷惑をかけることにならず、今は、ちょっと安心しています。

この雑誌の発行は10月頃なので、発売されたらお知らせします。

ところで、なぜ、こんなハードSFの執筆依頼が来たのかというと、たぶん、以前、私が宇宙とかコンピュータとかのSFを題材にした児童向き小説の単行本を出していたのだと思います。

よく覚えていてくれたなあ!
感謝、感謝!

『電子モンスター、あらわる!』(文溪堂)『スペースシャトルぶんどり大作戦』(旺文社)のタイトル、または「浜野えつひろ」のキーワードで、アマゾンとかで検索してみてください!

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写真は、関係あるのか、ないのか、宇宙館と絶対城。


(向かって左が宇宙館、右側の白い建物が絶対城)

宇宙館の柱には「宇宙万類中人類為最尊」の文字があり、宇宙すべての中で人類をもっとも尊しとなす、という意です。
「絶対城(ぜったいじょう)」は、絶対の境地に到達する道程の城。
わが日本が誇る妖怪博士、井上円了先生が作った中野の哲学堂です。

写真は、3月21日の撮影しましたので、今回の宇宙の物語の依頼を受けた後、数日後に、ここを訪れました。
小説のネタを探そうとはしていませんでしたが、これもまた奇遇です。